鉛筆や爪など硬い物を噛む活動は、顎の筋肉を強く使うことで、覚醒水準をちょうどよい状態に調整し、注意集中を促す作用があることが知られています。
また同時に、口を使った活動は、安心感や落ち着きを得ることに繋がる場合もあります。
このような癖が見られる場合、何もしないで座っていると下がりがちな覚醒(眠くなってしまう状態)を、なんとか自分自身で刺激を取り入れることにより維持している(起きていようとしている)と考えることができます。
程よい覚醒を維持することで、授業の中で先生の話を聞き、理解したり、板書された文字や図形を理解したりするために、無意識に子どもが行っている可能性があるのです。
また、不安やストレスを感じるような場面では、口に何か物を入れたり噛んだりすることにより落ち着こうとする対処方法である可能性もあります。
いずれにしてもこのような場合は、その行動をやめさせると注意集中ができなかったり、逆に不安やストレスを高めてしまう可能性もあります。
その子どもが覚醒が下がりやすい状況にあるのか、何か不安やストレスがあるのか、その背景にある問題を探る必要があります。
対応としては、鉛筆や爪に代わる、安全で清潔に保つことができるゴム製の噛んでも良いグッズを提供するのも一つのアイデアです(そんための専用の製品も市販さてています)。
家庭では、ガムなどを噛むことを許してもらうこともできるかもしれません。
また、からだを動かすことによって覚醒を高める方法も考えられます。
この場合は、授業の始まる前や途中に、ほんの少しの時間でも、強めの前庭感覚や固有感覚を体験できるような活動を取り入れると欲求が満たされ、授業中の鉛筆噛みや爪噛みが必要なくなる可能性もあります。
また、直接不安やストレスになるような要因があれば、それをできるだけ取り除くことも必要でしょう。
≪子どもの理解と援助のために 感覚統合≫から引用